風俗で働く全ての人へ~客からレイプ被害に遭い示談金を払ってもらうまでの記録〜

2022.03.30

私は、当時デリヘルで働いていました。 そこで仕事中に客からレイプ被害に遭い、加害者の客から示談金を払ってもらうという経験をしました。その経験の記録を残すことで、風俗で働く一人の人間として、どうやって自分を肯定しながら、自分のことを守って働けばいいのか、そんなことをお伝えできたらと思います。
(文・れもん)

【伝えたい5つのこと】

1 、常連さんでも断っていい!戦っていい!
2、お店が守ってくれると思わないで!
3、シャワーを浴びず、すぐ警察を呼ぶ!できなかったら早退して警察へ!
4、味方をしてくれる弁護士さんの見極め方
5、裁判に持っていくかは、支援者と一緒に考えよう

1、常連さんでも断っていい!戦っていい!

私が被害に遭ったお客さんは、お店のエースでした。新しく入ってきた私に興味を持ってもらい、その日は指名での利用でした。予めお店から共有があったのは、“優しくていい人”、“毎週のように利用してくれている人”、“小柄で大人しそうな性格の人”ということでした。
私が被害に遭った時、真っ先に考えたのはお店のことでした。 「もしここで通報したら、お店はどうなるんだろう」「このお店では二度と働けないかもしれない」「お店の人に恨まれたらどうしよう」 。
お店との関係は良好で、働きやすく、私に良くしてくれていたからこそ、こんなことが頭によぎりました。
結論、お店からしたら私は裏切る行為をしてしまったかもしれません。でもそんなこと、本当は思わなくていいんです。常連さんでも、自分の体を守るために、私は正しい選択をしたと思っています。

2、お店が守ってくれると思わないで!

お客さんがバックの体位で私の中に入れているとき、枕の下で隠れてお店にメールをしました。
「入れられてしまっています。助けてください」 そのメールだけをおくったあと、なかなかメールが帰ってこないので、枕の下で隠れて電話をかけました。
電話を繋いだまま、なにも話せませんでしたが、「嫌です」「やめてください」という私の声を聞いて、お店の人が部屋まで来てくれました。部屋まで入ってきてくれて、私は外で待つ車の中に戻りました。
お店の人から「大丈夫だった?」と言われた後、次の言葉に衝撃を受けました。
「次、指名のお客さんだけどいける?」 私にとっては大切なお客さんで、あまりにもお店の人がすんなりと言ったことで、それが当たり前だと思ってしまい、私は承諾してしまいました。
でも、これは間違いでした。

3、シャワーを浴びず、すぐ警察を呼ぶ!できなかったら早退して警察へ!

次のお客さんのもとへ行って、シャワーを浴びてしまいました。しかし、シャワーを浴びてしまえば、相手の体液が流れてしまい、大切な証拠が一つ、なくなってしまいます。
日本において、強制性交等罪の成立には、「同意していないこと」、そして、「同意をしていないこと」を証明するための「被害者の反抗を著しく困難にさせる程度の暴行・脅迫」(暴行・脅迫要件)がないといけません。
後で弁護士さんのところへ行ったとき、私が送ったメールや電話は一つの証拠になりましたが、シャワーを浴びたことで、そもそも相手が膣に入れていたのかということを証明することは難しかったです。また、電話やメールも、証拠にはなりましたが、暴行・脅迫要件からすると、電話やメールをする余裕があったのかと疑問を持たれる可能性があるそうで、大きな証拠とはなりませんでした。
レイプされた時は、体を洗わず、タオルやシーツもそのままの状態で保管し、服も捨てず、まず被害を受けた現場に警察を呼ぶこと。それができなかった場合は、できるだけ早く警察に行くこと。そして体が無事か、病院へ行って診てもらうこと。後になってこのことがとても大切だと知りました。

4、味方をしてくれる弁護士さんの見極め方

数日後、知人からの紹介で弁護士さんのところへ行きました。弁護士さんによって、これまで行なってきた弁護の種類があります。その人は女性や風俗で働く人の弁護をたくさん行なっている人でした。弁護士費用が必要かと思いましたが、当時学生だったので、成功報酬として払えば良いということでした(弁護士さんによります)。結論から言うと、本当に良い弁護士さんでした。
まず、私の体の心配をしてくれました。そして、私の言うことを全て信じてくれました。当たり前かと思いますが、全ての発言を文字に起こし、集められる証拠を全て集めようとしてくれました。自分のことを信じてくれる人がいるということがどれだけ心強いか、その当時は本当にありがたかったです。
警察に行く際も、女性の警察官と話せるように話を取り持ってくれました。そして、私の場合を立証できるための証拠が不十分でしたが、示談金だけで終わらせようとせず、裁判まで持っていくという選択肢を与えてくれました。

5、裁判に持っていくかは、支援者と一緒に考えよう

弁護士さんから示談金100万円という額を聞き、私は裁判をすることを諦めました。当時若かったため、100万円というお金は私にとってとても大きかったです。恥ずかしながらその額に流されて、裁判をすることは諦めましたが、今思えば裁判をしても良かったと思っています。なぜなら、裁判をしないということが分かった途端、相手は上手に出てきました。示談金をどんどん引き下げるよう要請してきて、結局その半分の50万円ということで示談しました。
もし裁判をした場合、結果がどうなったかは分かりませんが、勇気を出して裁判をしてもよかったなと思っています。
ただ、自分が裁判をした方が良かったと思うのと、一般的に被害者が裁判をした方がいいかどうかは別、と思います。いまの刑事司法の状況で現在の強制性交等罪で勝訴まで持ち込める可能性がどこまであるのか、勝てないとは言えないけど、民事裁判もしたとして100万取れるかというと微妙なところなのが実情ではないでしょうか。気持ちとして、裁判したい!という思いと、その時どきで自分にとっての無理しすぎない方法を、支援者と一緒にしっかり考えるのがいいと思います。
(加害者を特定するために、働く前に、客に携帯番号通知を求めるお店かどうか確認することも大事です。非通知も受け付けている場合は、番号通知する客のみ受け付けるようにお店に協力を求めて下さい。働く人を守ってくれる協力的なお店かどうかの一つの目安になります。)

世の中には風俗で働く人の味方をしてくれる人がたくさんいます。励ましてくれる人、法で守ってくれる人、支えてくれる人、SWASHの人たちも、私が信頼している人たちです。
どうか、風俗で働いているからという理由で、自分を守ることをやめないでください。「しょうがない」で終わらせないでください。風俗で働いていても、働いていなくても、私たちは同じ権利を持っていて、守られるべき存在です。1人で悩まず、相談してください。

わたしの経験が、誰かの役に立つことを願っています。そして、全ての風俗で働く人たちが、人としてお客さんに扱ってもらい、同等の権利を保証されながら、安心して働ける環境になることを心から願っています。

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