フランスのセックスワークに関する法律「買春処罰法」はどんな法律か?

2024.03.31

フランスのセックスワークと法律について、パリ政治学院の研究者、エレン・ルバイさんにインタビューしました。
Part.2では、2016年にフランスで成立した、性サービスを買ったお客さんを処罰する法律「買春処罰法」について解説してもらいました。
(Part.1「フランスのセックスワークってどうなってるの?」、Part.3「フランス買春処罰法がセックスワーカーの生活と仕事に及ぼした影響」もぜひご覧下さい)

以下、動画の字幕テキストです。


2016年にフランスは新しい法律を可決しました。その法律は、新廃止主義的(neo-abolitionist)な法律と言われ、法律として、スウェーデンモデル、または北欧モデルと呼ばれている売春制御対策のモデルを基にした法律だからです。北欧モデルというのはセックスワーカーと売春をやっている人達を犯罪者にせず、性的サービスの客を犯罪者にする法律制度です。

これから2016年の法律の主なポイントを紹介したいと思います。そして、2016以前からもあり、まだ続いている法的規定も説明したいと思います。

まずは、2016年の法律の最も大事なポイントは、フランスでの客引きの禁止を廃止したという事です。

具体的に、その法律の目標は、売春をやっている人々の非犯罪化でした。例えば、2016年までは、道端で客を探す行為は犯罪でした。

直接、道端で警察から逮捕され、罰金を課せられることが可能でした。それは、公共の空間で客を誘っていたらという場合でした。その行為の違法性は、現在では廃止されています。

つまり、公式にフランスの法律によると、性的サービスを売る行為は合法であり、それを咎める判決はありません。

しかし、2016年以来は、逆に客が告訴される事になったのです。簡単に言うと、性的サービスを買う事が禁じられるようになりました。性的サービスを売ることは合法です。しかし、性的サービスを買う事は違法です。

初めて性サービスを買った事で告訴されれば、1500ユーロ(約24万円)の罰金を与えられます。再犯した場合は、その罰金が最大3750ユーロ(約60万円)まで上げることができます。しかし、その犯罪に関わる禁固刑はありません。

もし、告訴されている客が希望するならば、売春と人身売買についての短かい意識改革コースに参加する事もできます。その短いコースを受けた場合、罰金を免除する事ができます。

2016年の法律のもう一つの大事なポイントは、売春の被害者のために設置された売春脱却プログラムという措置です。

その売春脱却プログラムによって、人々が、売春の被害者として認められる事ができます。

注意点なのですが、人身売買の被害者ではなくて、法律に使われている表現は“売春の被害者”と言われます。

もし、そのプログラムに選ばれれば、様々な支援をもらう事ができます。

例えば、 財政的な支援があります。

財政的な支援といっても、月に300ユーロ(約4万8000円)程なので、まったく十分ではありません。

しかし、プログラムに入れる事によって、違法滞在の移民は経済的な支援より最も有効になる滞在カードを得る事ができます。

売春脱却プログラムに基づいた特別滞在許可は、6ヶ月間の一時的なカードです。

それは期限が切れたら、一回だけ改められるので、最長で一年間まで延長が可能です。合法的に滞在しないと国の支援措置にはほとんどアクセスできない移民なので、その滞在カードと共に、住宅を見つけるような支援、職業トレーニング、又はフランス語の授業や、売春以外の職業を見つけるような支援がもらえます。

2016年の法律で新しく決められた細かい事は他にもあります。その新しい法律によると、セックスワークをしている最中にもし、暴力を振われる事があれば、つまり、売春中に暴行に遭えば、加重要因が付けられます。

加重要因というのは、犯罪の状況によって、違法性が上がり、判決が重くなるという事です。なので、売春中の人に暴力行為を行った場合は、下される判決がもっと重くなりました。

最後にもう一つのことを説明しようと思います。

この法律以前からあるのですが、フランスの状況を理解できるように、最も重要な事です。それは、フランスでは売春をめぐる物事が非常に犯罪化されているという事です。売春をめぐる物事とは、売春をしている人々や客ではなく、その他に関する全てです。それらをまとめたリストは極めて長いのです。つまり、簡単に言えば、どのような方法でも、売春をしている人を手伝う事、又は応援することは禁止されています。

他人のセックスワークに協力する事ができないというのは、例えば、セックスワーカーに住宅を貸す事は禁止とされています。そして、セックスワークに使われる自動車を貸すのも禁止とされています。

又、セックスワークに関するオンラインの求人を載せる手伝いも禁止とされています。先ほど話されていたセックスサービス専門のウェブサイトが大体フランスのサーバーに属されていない原因は、違法とされているセックスワークの協力に当てはまります。

もちろん、印刷されている新聞や他の求人掲載を使う事も禁じられています。すなわち、集客に協力する事も違法となっています。

売春をしている人の移動に協力する事も違法なので、売春の移動に協力しているタクシーや運転手(プロ、ボランティア、又は友人、その他の協力者)も犯人として見なされます。

売春中の警護や安全を守ったりする人達もセックスワーカーに雇用されてはいけません。つまり、売春の協力や援助の範囲に入る行動はとても多いのです。その結果、団結をして、セックスワーカー同士が力を合わせて、協力した場合も、同僚を手伝った事で告訴される事があります。

同じように、セックスワーカーのパートナーや、彼氏、彼女などが日常生活でセックスワークよる利益を得なかった事や、自ら必要としていない事を証明できなければ告訴される事があります。フランスのセックスワークに関する法律の簡単な紹介でした。

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